兵庫県南部地震から16年、耐震研究と耐震診断の現状

16年目の1月17日を迎えて

兵庫県南部地震以前とその衝撃


(平成13年度 国土交通白書のページより)

明日、1月17日で兵庫県南部地震阪神淡路大震災から16年となる。兵庫県南部地震は、建築構造や地震工学を生業とする研究者やエンジニアにとっても、大変衝撃的な地震だった。兵庫県南部地震以前の地震、例えば1968年の十勝沖地震、1978年の宮城県沖地震、これらの地震がもたらした甚大な被害は、建築基準法改正の契機となり、構造部分に関する規定が強化されることとなった。78年の宮城県沖地震以降でも地震はそれなり頻発していたが、例えば鉄筋コンクリート造建物の被害と言う点では被害はそれほど見られず、「日本の建物は地震に対してかなり安全になった」というのが大方の見解であったと思う。
1994年には、アメリカでノースリッジ地震が発生し、建物の倒壊が相次ぐなど甚大な被害がもたらされた。この地震の直後の報道で、「日本の建物はアメリカの建物に比べて安全なので、このような被害にはなりません」というような主旨のことをテレビや新聞で主張した専門家*1がいたらしいが、恐らくそれは多数の専門家の見解を代表しているものだったと思う。*2


奇しくも、このノースリッジ地震からちょうど1年後の1995年1月17日、兵庫県南部地震が発生する。だいたい今25歳以上の人は、連日テレビで報道される被災地の惨状を強く記憶していることと思う。あるいは、被災地の様子を直に目の当たりにした人も多いだろう。60万棟を超える建物が倒壊などの被害を生じ、死者は6000人を超えた。そのような目に見えやすい被害の他にも、被災者やその遺族の心に大きな傷を残した。
建築構造に関わる専門家にとっても、この未曾有の大地震は、大きな衝撃だった。実際に彼らが基準を作り、彼らが設計した建物で多くの人が亡くなったのだから、本当は「大きな衝撃だった」では済まされないのだが、とにかく他に形容のしようがないほどの大きな衝撃を受けたのだった。

耐震研究の進捗

この「建築構造の大敗北」を契機に、建築構造に関する研究も、再び活発化し始めた。自治体では避難所ともなる学校施設の耐震診断と耐震補強を急ぐ事にした。住民達の防災意識の高まりが、これを後押しした。
まず今回紹介するのが、兵庫県南部地震の被害調査結果である。当時の耐震診断法(今の方法とほぼ同じ)で神戸市内の鉄筋コンクリート造学校建築物の耐震診断を行い、横軸に耐震診断の指標値(Is値:0.6が基準値で、大きければ大きいほど良い、とされる)で縦軸に被害程度をとったグラフである。

これを見ると、全体的にはIs値が高い建物ほど被害が小さかったという傾向が見られる。図中のプロットの種類は、その学校建物が立地している地域を表しており、図中の右上、Is値が高かったものの被害が大きかった建物は全て西宮・芦屋市の建物である。
このように、例外はあるものの、Is値が高い建物が全体的には安全だという事が分かったため、「耐震診断をして耐震性が足りなければ耐震補強をしましょう、但し耐震補強をして基準値を上回ったところで100%安全というわけではありません」というのは、一般論としてまあ妥当だろう。


しかし、実際には基準を満たしていても大破する可能性はあるわけで、これをどのように解釈するかという問題もある。何故、基準値を上回っていても大破したのかという疑問については、この16年間色々な研究がなされていて、個別の建物については被害の理由を説明出来るようにはなっている。
例えば、cinii検索−西宮高校にその例がいくつかある。
このように、現状、個別建物に発生した被害の要因を後付で説明することが出来るだけの知見は、我々は持っている。そして、今後こうした知見を基準や建物の設計などに反映していくことが必要になる。そのプロジェクトが、「建築基準整備促進事業」の「耐震診断法の高度化に関する検討(PDF)」である。近い将来、この研究結果を受けて、耐震診断法がより高精度化されるはずだ。


*3

耐震診断と耐震補強の現状

将来的な話は以上だが、現状では耐震診断を行って実際に耐震補強するとなると、どうしてもコストの問題が生じるため、耐震化率はそれほど向上しないのが現状である。「耐震補強を行っても、100%(あるいはほぼ100%)の安全ではないのだろう?」というのは、上で図で示した実際の被害事例からも明らかなように、真実ではある。一般ユーザや建物所有者にとっては、「耐震補強で得られる安心」と「耐震補強を行うコスト」を量りにかけると、どうも後者の方が重たく見えるようである。確かに、基準を下回ってる建物であっても、実際に(現在のペースで日本に地震が発生すると想定して)地震で大破・倒壊する建物は何%あるのか、というと平均的には1%もないと思う*4。その上、耐震補強しても100%安心というわけではないとなれば、この感覚は基本的には正しいと言えるだろう。さらに言ってしまえば、耐震補強工法は玉石混交であり、実際には効果のないダンパーなどを売りつけられてしまうリスクも少ないが、ある。


じゃあ、安くすればいいという話になるが、耐震診断や補強設計を行う構造設計者の言い分もある。


私が以前関わっていた構造設計事務所は、大手ゼネコンでエース級の活躍をしていた人が経営していて、その事務所の所員の構造に関する知識は相当のものだった。その事務所は、住民からの依頼を受けた自治体からの要請で、木造住宅の耐震診断を行っていた。
その事務所の所長と飲んだときに、所長は厳しい顔つきをして「木造住宅の耐震診断は、ボランティアでやってるんですよ。お金にならないもん。」と言った。木造住宅の耐震診断は、住民へのヒアリング、現地調査(2人で丸一日掛かる)、耐震診断、補強設計、結果の住民への説明を行うことになるのだが、ここまでやっても事務所に入るお金はほとんど無く、良くて±ゼロといったところらしい。鉄筋コンクリート造でも同様で、初めて鉄筋コンクリート造建物の耐震診断事業を行おうとした別の事務所の所長は、自治体に提示された設計料と作業内容を見て、「この金でここまでやらなきゃいけないの!?」と驚いていた。これでは、基準通りに診断プログラムに入力してそのまま結果を説明するのがやっとで、高度な工学的判断をしてより良い診断や補強を行う事が出来ない、という声はよく聞こえる。


現状、これでバランスしている。ユーザー側の「耐震補強で得られる安心」「耐震補強を行うコスト」、「(低い)耐震化率」、「設計事務所のボランティア精神」「耐震診断、補強の質」が、現状では、このように危うい均衡を保っているのだ。

防災から減災へ

これが、兵庫県南部地震から16年経過した現在の、耐震診断・耐震補強の現状である。このような現状を受け、災害による被害を未然に防ぐ「防災」ではなく、リスクを経済的・社会的に許容できる範囲で低減させる「減災」の考え方が広まって来ている。例えば、「現状、基準値の半分程度しか耐震性がない建物に住んでいるが、お金が無いので、100%は無理。だからせめて75%まで回復させよう。」という考え方や「せめて家具の下敷きになるリスクを抑えるため、ホームセンターで機具を買ってきて補強しよう」という考え方が「減災」である。今後は、このブログでも色々な減災の取り組みを紹介していく予定だ。


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*1:名前は覚えていないが、検索したら、似たような証言がこの辺にあった

*2:そしてそれは、日本の建物とアメリカの建物を比較した場合に、一面では事実だったと思う。

*3:これは阪神淡路大震災での写真ではない

*4:もちろん地震危険度が高い地域は別。近年の地震で言えば、せいぜい500m×500m程度の狭い範囲で、木造住宅全壊率は最大でも30%前後なので、日本全国の住宅と建物の寿命で均せば1%もない、という程度の根拠

長周期地震動対策の義務化について

朝日新聞超高層ビル「ゆっくり揺れ」対策も義務化 国交省方針という記事が話題になっている。

震源から遠く離れた高い建物を大きく揺らす危険がある長周期地震に対応するため、国土交通省は新たに建てる高さ60メートル以上の超高層ビルやマンションに、長周期の揺れも考慮した耐震強度を義務付ける方針を固めた。すでに完成した超高層ビルにも、揺れに耐えられるか点検し、必要なら補強工事するよう求める。早ければ新年度前半からの義務化を目指す。

「揺れに耐えられるか点検」とあるが、耐えられるか耐えられないかの基準は、どのようになるのか。おそらく、層間変形角(階の高さに対する地震による水平変形の比率)を○%以内に抑えるというような、変形に基づいた基準になると思われるが、変形に基づいた基準で判断するのであれば、『長周期の揺れも考慮した耐震強度を義務付ける方針』とあるように、強度を上げる方向の補強と読めるのは矛盾しているようにも思えるが、レトリックというか、そういうことなのだと考えた。
すでに完成したビルに対しての補強、というと柱梁フレームの中にブレースを入れて強度を上げるなどの対策が一般的だが、超高層建物では(建物の固有周期が長く、長周期地震動で共振しやすい。長周期地震動で共振すると、地震動の性質上変位が大きくなるので)長周期地震動への対応の比重が大きくなるので、変位を抑える耐震補強設計が主に行われる。そもそも、超高層建物では、地震に対する基準よりも、風圧力(地震よりも長周期)に対する基準の方に対して厳しくなることも多い。具体的な補強方法としては、ダンパーを入れてエネルギー吸収能力を高める方法が採られると思われる。

長周期地震動は、最近一般レベルでも話題になっていて、それに対応して研究もかなり行われるようになってきている。一方で、長周期地震動は実際に来てみないと分からないといった側面もあり、想定よりもさらに長周期だったり、とかいうこともあり得るわけで、補強の義務化は基本的にはいいことだと思う。それに、超高層建物は地震によってオフィスの機能が停止したりすると、経済損失もたくさんのテナントが入っている分、非常に大きくなり得るし。ただ、超高層建物は学識経験者らによる評定を取らないと建ててはいけないことになっているので、安全性に関する信頼性は、家具の転倒防止などのソフト面の対策さえ行っていれば、相対的には高いと思われる。


上の動画は防災科学研究所の世界最大の振動台(E-DEFENCE)で行われた長周期地震動によるマンションのリビングでの揺れの動画だが、やはり家具の固定などの対策が重要だと思う。逆に、それさえやっていれば、ユーザーとしては、過度に不安視する必要はないのではないか。

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建物の崩壊を引き起こす10種の欠陥

アメリカでは、ASCE(アメリカの土木学会)が定めている、ASCE/SEI41という基準がRC造建物の耐震診断で用いられることが多い。このASCE/SEI41の更新・高度化の研究プロジェクトが現在行われており、NIST(National Institute of Standards Technology:アメリカの日本学術振興会みたいなものか)の研究助成に係る研究計画書(PDF)「Program Plan for the Development of Collapse Assessment and Mitigation Strategies for Existing Reinforced Concrete Buildings」がWebで公開されている。これがとても面白く、アメリカではどのような方向性で鉄筋コンクリート建物の耐震研究を進めていくのか、ということがかなり開けっ広げに書いてある。著者は、NEHRPという(National Earthquake Hazards Reduction Program)プロジェクトのJVで、Jack Moehle先生など、著名な学識経験者が参加している。


その研究計画書から抜粋。Common Deficiencies in Nonductile Concrete Buildings として、これまでの地震被害で多く見られた特徴的な被害形式が10個、表形式でまとめられている。

A:柱のせん断破壊
B:拘束が小さい隅角部の柱梁接合部破壊
C:スラブ(床板)と柱の接続部のパンチングシア破壊(押しぬきせん断破壊)
D:仕口部分(例えば柱の柱頭と柱脚部分)での定着破壊
E:相対的に弱い層(例えば、1階を駐車場にしたピロティ構造みたいなもの)への変形集中による層崩壊
F:全体的に弱い骨組の全体崩壊
G:転倒モーメント(建物全体の回転)による崩壊
H:不整形平面(T型やL型などの平面によって生じる特定の部材への応力集中)による崩壊
I:セットバックなどの不整形立面(による特定の部材への応力集中)による崩壊
J:隣の建物の衝突による崩壊
(以上、意訳です)
簡潔に要領よくまとめられていると思う。日本でも大体同じようなことが言えると思うが、日本との違いで言うと、柱と梁の接合部、柱と床スラブの接合部に関するattentionがとても多い。確かに、海外の地震の被害調査に行くと、柱と梁の接合部が壊れている建物が多いので、それを反映してのことだと思う。
ちなみに、専門的な話をすると、柱と梁の接合部が壊れると、いわゆる不静定次数が柱や梁単体が破壊するよりも大きく低下するので、とても危険な破壊形式になる。このため、接合部は絶対に壊れないように設計する必要がある。


旧基準で建てられた建物は、当時想定していなかった破壊形式(上のA〜Jなど)が発生する可能性があるし、当時の想定よりも大きい地震が発生すると崩壊するかもしれないので、なるべく耐震診断をしたほうが良い。その耐震診断の精度向上に関する研究が今回紹介したプロジェクト「Program Plan for the Development of Collapse Assessment and Mitigation Strategies for Existing Reinforced Concrete Buildings」で行われているので、その成果が反映されるASCE/SEI41のアップデートは楽しみに待ちたい。


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地表の最大加速度ギネス記録と日本の強震観測点密度

 2008年の岩手・宮城内陸地震で、震源断層の真上で観測された、最大加速度4022ガルが、史上最大としてギネス記録に認定された。防災科学技術研究所茨城県つくば市)が11日、発表した。

 これまでの記録では04年の新潟県中越地震で観測された2516ガルが最大とされていたが、岩手・宮城内陸地震での記録はその1・5倍以上。

 文科省地震・防災研究課は「日本が地震大国であることの再確認につながる記録」と説明している。

 岩手・宮城内陸地震は08年6月14日に発生したマグニチュード(M)7・2の地震で、岩手、宮城両県の一部で震度6強を観測。死者17人、行方不明者6人を出すなど大きな被害があった。
2011/01/11 20:44 【共同通信

地震の最大加速度をギネス認定 08年の岩手・宮城内陸

私の感覚では、「日本が地震大国であることの再確認」というよりは、「日本の地震観測網が高密度であると再確認」の方がしっくりくる。たしか、日本では約25km四方に1箇所くらいの強震観測点があるのだとか。
見よ!

(防災科学研究所・強震ネットワーク(K-NET)観測点一覧)
これだけあれば、断層真上で観測される可能性も高い。

強震記録は、
1)同時に
2)多点で
観測されればされるほど研究にも使いやすいし、地震そのものの解明にも役立つが、ここまで観測点網が高密度な割には、まだ明らかになってないことが多いと感じる。ちなみに、地表の記録が4000galを超えたとしても、それが直接建物や人的被害につながるとは限らない。ちなみに、過去の地震では、K-NETの(最大)加速度・(最大)速度・計測震度についてより引用すると、




地震 日時 (JST) 観測点名 最大加速度 [gal] 最大速度 [cm/s] 備考
北南 東西 上下 3成分 北南 東西 上下 3成分
新潟県中越地震 2004/10/23, 17:56 気象庁川口 1142 1676 870 1722 50.3 146.0 82.9 148.3 震度7
K-NET小千谷(NIG019) 1144 1308 820 1500 97.5 128.7 39.0 136 震度相当値7
気象庁小千谷 779 897 730 1007 65.6 84.1 28.1 95.3 震度6強 �’
気象庁山古志 524 722 1059 1132 107.2 88.5 56.4 125.3 震度6強
K-NET十日町 (NIG021) 1716 849 564 1750 53.1 50.0 13.6 65.5 震度相当値6強、加速度大
新潟県中越地震

(余震)
2004/10/23, 18:34 気象庁川口 1639 2036 549 2516 42.5 66.5 17.0 68.0 震度6強。加速度本震より大。

速度はそれほどでもない
鳥取県西部地震 2000/10/06, 13:30 KiK-net日野(TTRH02) 923.9 755.9 775.9 1142 127.1 83.3 56.0 147.2 震度相当値7
宮城県沖地震 2003/05/26,18:24 KiK-net住吉(IWTH04) 729.6 723.1 1280 1304.5 31.4 31.8 17.0 36.6 高周波(短周期)卓越
KiK-net陸前高田(IWTH27) 887.9 555.8 636.6 1098.0 17.2 12.0 9.47 18.2 高周波(短周期)卓越
十勝沖地震 2003/09/26, 04:50 K-NET苫小牧(HKD129) 86.7 72.9 33.0 89.3 31.4 38.9 16.0 40.0 長周期(低周波)卓越
K-NET広尾(HKD100) 809.5 969.8 461.2 985.8 43.5 46.7 24.3 52.4  
兵庫県南部地震 1995/01/17,05:46 神戸海洋気象台(JMA) 818.0 617.3 332.2 891.0 96.5 80.3 42.9 112.1  
JR鷹取 608 645 280 759 129.7 135.8 12.6 169.1
葺合(大阪ガス 688.0 800.7 N/A 835.8 59.6 126.9 N/A 134.6 上下動なし。2成分合成
能登半島沖地震 2007/03/25,09:42 K-NET穴水(ISK005) 473 782 556 903 34.6 98.7 18.6 103.7
K-NET富来(ISK006) 717 849 462 945 38.4 50.5 21.4 60.1
新潟県中越沖地震 2007/07/16,10:13 K-NET柏崎(NIG018) 667 514 369 813 (109.7) (83.5) (26.7) (126.8) 強い非線形
K-NET小千谷(NIG019) 391 455 116 527 21.3 45.8 9.0 47.9
やはり、必ずしも地動加速度の大小が必ずしも被害の大小と関係してない。この中で特に被害が大きかったのは、山古志(2004中越)、穴水(2007能登)、柏崎(2007中越沖)と兵庫県南部地震。被害と地震動の特性は、もっと別の要素が関係しているのだ。その話はまた今度…ということで。





大崎先生が書いた、「地震と建築」という本です。やや古いですが、その辺の話が分かりやすく書いてあります。

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建築構造・構造設計の理解のために役立つ本・ホームページのまとめ

建築構造の勉強をしようと思って本屋に行くと、建築構造関連の本がたくさんあり、どの本を選べば良いか分からなくなった経験はないだろうか。「マトリックス法による〜」みたいな堅い印象を受けるタイトルのものから、「マンガで分かる〜」のような親しみやすいものまで、本当にたくさんある。
どの本が良いか、というのは使ってみなければなかなか分からないものなので、初学者(学部生)、大学院生、経験数年程度の実務家の方を対象に、これまで私が使った本の中で、建築構造に対する理解が非常に深まった本や、インターネット上の情報をまとめておきたいと思う。
※注意点

  • このページの情報は、随時アップデートしていく予定なので、しばらくしたらまた見に来てください。
  • ここで挙げた本や情報は、私が正しさを保障するものではありません
  • 私の専門がRCなので、内容はRC(と木造)に偏っていますが、骨組解析の理論などもありますので参考にどうぞ
  • 難易度は下に行くごとに高くなっていきます。

インターネット上の情報


名古屋工業大学の市之瀬研究室で開発している構造力学入門ソフトです。モールの応力円など、学生がつまずきやすいところを視覚的に理解できるので、かなり便利。完成度も高いです。

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この本と連動しているのですが、基本的には本がなくても結構いろいろ出来ます。

このページの右下にある「コラム」の欄で連載されている「保有水平耐力」「変位法」などの解説が分かりやすいです。

武蔵工業大学の電子サイバー講座です。内容は少し難しいかな?

地震応答解析とタイトルがついていますが、建築構造についてかなり網羅的になっている対談形式のコラムです。相当分かりやすく、内容としても分かりやすいのでオススメです。

鉄筋コンクリート構造 (建築学の基礎) :学部生向け

上で書いた構造力学入門ソフトウェアの市之瀬先生が書いた本です。視覚的な理解をしやすいし、遊び心満載でとても楽しく読めます。

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鉄筋コンクリート構造を学ぶ:学部生向け

RC構造について網羅的な内容になっています。用語解説など、読者にかなり配慮しているので、初学者にも安心して読める本です。

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伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル―限界耐力計算による耐震設計・耐震補強設計法:学部生〜大学院生向け

木造住宅の耐震設計の方法が詳しく記述してあるので、木造の設計や診断、研究をする人のバイブル的な本だと思います。限界耐力計算についてもかなり詳しく書いてあり、実は私もこの本で限界耐力計算のイロハを学びました。

最新 耐震構造解析:全人向け

建築構造に関する本で、マスターピースと言っても良い本だと思います。学生も、実務者も、研究者も皆、持っています。建築物の耐震構造に関する理論や例題が網羅的に書かれており、その内容の深さも「かゆいところに手が届く」といった感じで、本当に大事なことが全部書いてあるというスペシャルな本です。

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新・地震動のスペクトル解析入門:大学院生・上級者向け

かなり地盤系の内容ですが、地盤に関わる研究や仕事をしている人は必携の一冊です。模擬地震動の作成方法やフーリエスペクトルなど、地震動と建物と地盤の関係が体系的に書かれています。

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マトリックス法による構造解析:大学院生・構造設計初心者むけ

東大の青山先生が書いた、一般的に使われている骨組解析の理論について、かなり詳細に書かれています。ここに書いてある理論がある程度理解できると、一貫計算プログラムでどのような計算が行われているかが具体的にイメージできるようになるので、構造設計者に最適の本です。

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鉄筋コンクリート造建物の耐震性能評価指針:大学院生・実務家向け

最近さかんに言われている性能設計という言葉がありますが、建物の性能を具体的にどのように評価するかについて、建築学会がまとめた指針です。

※随時更新予定